『人魚姫』ものがたり食堂Vol’25

約1年ぶりの更新になるのではないでしょうか?
久しぶりすぎてウェブサイトの中をどう扱っていいのか忘れつつあります。

久しぶりなのはウェブの更新だけではありません。本当に久しぶりにものがたり食堂を企画しました。

今回の物語は『人魚姫』
毎年お世話になってるヴェネチアンガラスとコスチュームジュエリーのお店chisaさんにて開催しました。実はchisaさんと去年打ち合わせをしていた時に見せて頂いたヴェネチアンガラスのお皿を見て『これを使って人魚姫をやりたい!!』そう思ったのがはじまりでした。

2019/7/18~7/21
『人魚姫』

ディズニーの『リトルマーメイド』で有名なお話ではありますが、今回はアンデルセンの原作『人魚姫』からお料理を作りました。アンデルセンの描いた海の中のお話は色鮮やかで私たちが思ってる以上に素敵な場所として描かれていました。

〜海の花園〜
はるか沖合の深い深い海に珊瑚でできたお城がありました。このお城に住んでいるのは海の王様と美しい人魚達です。深海は暗くて砂地だけの世界だと思ってはいけません。珍しい木や草がたくさん茂っていてお城の外には大きな花壇があるそうなのです。王様の娘達は6人姉妹。その末っ子の人魚姫がお話の主人公になります。姫様たちは大きな花壇の中にそれぞれ自分の花壇をもっていました。
あるお姉さんは鯨を形どった花壇を、あるお姉さんは自分を形どった花壇を作っていましたが末っ子の人魚姫が作っていたのはお日様のように真っ赤に光る花壇を作っていたのです。

そんな人魚姫の真っ赤な花壇をイメージして作ったのがこちら。
ビーツと玉ねぎのソースに鴨のローストにフォアグラのクリームをのせた珊瑚を思わせるように作ったチュイルを添えました。

〜花かんむり〜
人魚姫たちは深海で生活をしていますが、15歳になると海上に出てもいいというお許しをもらえるのです。一番下の人魚姫はお姉さんたちの海上の話を聞きながら憧れて海上への思いを馳せました。海上では大きな街が見えたり、海に沈む太陽が綺麗だったり、海ではなく川をさかのぼって森というものを見つけたり、犬という生き物に出会って吠えられて怖い思いをしたり、船というものを見たり、大きな鯨が潮を吹き出しているところに出会ったり、氷山を見たり、と・・・・。そしてついに末っ子の人魚姫が海上に行く日がきました。その特別な日におばあさまは真珠が飾られた花かんむりを人魚姫へプレゼントしたのです。

そんな場面から
お皿の淵にホタテ、ムール貝をメインにサラダを盛り付けて仕上げにワタリガニの出汁を使ったビスクを流しました。

〜魔女からの贈り物〜
末っ子の人魚姫が初めて見たものは大きな大きな船でした。その大きな船ではたくさんの人間たちが楽しげに踊ったり歌ったりと楽しげにしていたのです。人魚姫はその人間たちの中から見とれてしまうくらいのハンサムな男性を見つけ、じっと見つめ時間を忘れてしまうほどでした。
その夜大きな嵐で彼を乗せた船は難破してしまいます。慌てながらも人魚姫はその彼を救い出し一晩中抱えて泳ぎました。日が昇り暖かくなって来た頃にお寺か修道院かはわからない古い建物の近くの砂浜にその彼を寝かせました。人気を感じはじめた人魚姫は海の中からそっと彼を見守っていました。しばらくすると一人の若い女性が彼に気づき大変驚きながらも彼のそばに歩みよりました。人魚姫は不安に見守っていましたが、ほどなくして彼は目を覚ましたのであとは人間に任せよう。そう思い深海へを戻って行きました。

それからというもの人魚姫は彼の事のことを忘れられなくなっていました。もう一度会いたい。もう一度彼に触れたい。そう思いながら毎日を過ごしているうちに人魚姫は人間になりたいとまで思うようになりました。彼女はハンサムな彼に惚れてしまっただけではなく人間たちの魅力に惹かれていたのです。300年生きる事ができるが死んでしまうと泡になってしまうだけの人魚とは違い、人間たちは魂というものを持っていて、天国という素敵なところへ行く。そうおばあさまから教えてもらってから益々人間への憧れが募って行きました。もうこれはどうにかしたい!!そう思った人魚姫は海の魔女の所を訪れるのでした。
魔女は人魚姫の望みをお見通しで自分なら簡単に人間にしてやる事ができると言いました。ただし彼女の美しい声と引き換えにという条件付きで。さらに魂をもって完全な人間になるにはそのハンサムな彼に愛してもらい結婚しないといけないというのです。つまり、『彼に愛してもらう事ができなければ海の泡となって消えてしまう』という事なのです。人魚姫は悩み考えているとさらに魔女は言いました。『人間のような足を持つ事ができるが歩くたびにナイフでさされたような痛みを伴うだろう』とそれでも人魚姫の気持ちは変わらず、人間になりたい!!!そう思い魔女からもらった人間になれる薬を飲んだのです。

声と引き換えにという部分なのですが、人魚姫の舌を切り取ったと言われています。そんな場面から3品目長時間煮込んだ牛タンを混ぜ合わせながら食べるタコライスならぬ、タコキヌアでした。
スパイシーに味付けしたキヌアとさっぱりした野菜にコリアンダーなどのハーブをたっぷり使ったソースを添えました。ライムの香りが一層味を引き立てます。

人間の姿になった人魚姫は薬のせいで意識を失い、砂浜で倒れてしまっていました。そこへとても運がいい事に偶然あのハンサムな彼が通りかかり彼女を見つけ助けました。なんと彼は浜辺の近くの大きなお城に住む王子様だったのです。人魚姫は目を覚まし目の前にハンサムなあの王子様がいる事に驚き目をそらしました。王子様は『きみは誰だい??どこから来たんだい?』そう聞いてくるのですが、話たくても話せません。そこで王子様は人魚姫の手を取りお城に連れて行きました。はじめて歩く足は魔女の言っていた通り、いえそれ以上に歩くたびに痛みました。人魚姫はこらえながらも王子様にすがりながらシャボン玉のように歩いたのです。
それからというもの、すっかり王子様は人魚姫を気に入りいつもでもそばにいるように、自分の部屋のすぐ近くに人魚姫お部屋を作りました。高価なドレスを与えたり、足の悪い人魚姫の為に馬を用意してとてもとても可愛がりました。ある日王子様が打ち明けます。『僕には好きな人がいる、それは船が難破した日に僕を救ってくれた人なんだ。』と人魚姫はそれは自分だと言いたいのだけど声が出ません。王子様はその人と一緒になりたいのだけど、彼女は修道女だから結婚ができない。とも言いました。人魚姫はとても複雑な気持ちになりましたが王子様はこうも言いました『お前はその娘の生き写しのようだ、修道院につとめている娘だからもう会う事もないが、僕の幸運の神様がその娘の代わりにお前を僕のところに連れて来てくれたのだろう』

〜最後の夜に〜
ある日王子様が隣国の綺麗なお姫様と結婚するという噂が広まりました。
『僕は旅をしなくてはならないよ。隣の国の美しいお姫様に会いに行くのさ。でもその人と結婚するとは決まってない。だって僕には心に決めた人がいるからね。いつか結婚しなくてはいけない。そんな時が来たらあの修道女にそっくりなお前と結婚するよ』そう言って王子様は人魚姫の唇にキスをしてそれから長い髪をいじり、その胸に顔をおしつけました。人魚姫はもうそれだけで人間に生まれ変わった幸福を、死なない魂の事が夢のように浮かびました。そして王子様と一緒に大きな船に乗り隣国の港町を目指したのです。

ところが

隣国の美しいお姫様というのが、あの王子様が想い寄せていた修道女だったのです。修道女になっていたのは聖職者になる為ではなく、教養をつける為でした。見も知らぬ姫君を好きにはなれないと思っていたし、心に抱く想い人とは2度と会えないだろうと諦めていた王子様は、予想だにしなかった想い人が縁談の相手の姫君だと知り、喜んで婚姻を受け入れて姫君をお妃に迎えるのでした。
王子様と結婚できないとわかってしまった人魚姫をまっているのは『死』でした。王子様とその美しいお姫様の結婚が決まった夜は人魚姫にとっての最後の夜でもありました。日の出と共に海の泡となってしまいます。

想いを寄せていた人との思わぬ再会で結婚が決まり浮かれる船上の賑やかさと人魚姫の『死』への絶望を表したお料理です。シンプルなイカスミのリゾットとトマトソース、最後に彩りでターメリックを散らしました。

〜海の世界へ〜
悲しみに暮れる人魚姫の目の前に現れたのは長い美しい髪を失った人魚姫のお姉さまたちでした。髪と引き換えに海の魔女に貰った短剣を人魚姫に差し出します。王子様をその短剣で刺し殺し、彼の血で人魚の姿に戻れるという魔女の伝言を伝えます。

パスタのカッペリーニを使い人魚姫の髪を表現しました。イタリア語でカッペリーニは『髪の毛』と言う意味があります。ズワイガニを使った冷製のパスタにモッツァレラといくらを添えました。このお皿が私が一目惚れしてヴェネチアから買ってきて頂いたお皿です。

〜人魚姫の涙〜
夜、眠っている王子様の前で短剣を構えますが、愛する王子様を殺す事と彼の幸せを壊す事が出来ずに自らの死を選び、海に身を投げて泡になってしまいます。

お話の中では『人魚は泣かない』とされ涙は流さないのですが、とても悲しい辛い場面で心で泣いている人魚姫を思いこのお料理の名前をつけました。
ベリーヨーグルトのアイス、りんごとライチのゼリー、桃のゼリー、バタフライピーのゼリー、シャインマスカットを盛り合わせました。写真ではわかりずらいのですが、バタフライピーのシロップがかけられていて、テーブルに用意された液体を注ぐと青から紫に変色するサプライズを仕掛けました。

 

〜風の精の香り〜
海にみを投げて泡になってしまった人魚姫でしたが、そのまま消えてしまった訳ではなく風の精になって泡からどんどん空へと浮かび上がって行きました。どこに行くのか戸惑う人魚姫に風の精は言いました。
『暑い国へ涼しい風を届けに、空の中に花の香りを振りまきに、物を爽やかに、またすこやかにする力を運びます』
泡となって消えてしまうと思っていた人魚姫は思いもよらぬ生まれ変わりをしたのでした。風の精も人魚と同じく魂は持たないが300年勤め続けることにより魂を自力で得られると言うのです。

最後のデザートはグラハムクッキーの上に豆乳のパンナコッタ、その上にはラベンダーのゼリー、ボール状のホワイトチョコレートの中にはあんずジャムを詰めました。最後にスパイシーはチャイのソースを注いで召し上がっていただきました。風の精をイメージして沢山の香りを詰め込んだデザートに仕上げました。

原作を読んでいて思ったのは、王子様よ、気づいておくれ!!!と読者ながらも強く思ったのでしたw
人魚姫も思ってた以上の足の痛みにきっと1度や2度は人間になった事を後悔したのではないか??とかそもそも声を奪われてさらに足が痛いなんて・・・せめて普通に歩かせてあげてよ。などなど王子様の勘違いで話が悲劇に変わってしまい、想像以上に残酷でした。
とても悲しい人魚姫のお話でしたが、彼女は私たちの見えない風の精となりきっと今は魂を持っているのかもしれない。そう思うと王子様とは結ばれなかった結末でも一つの夢は叶っているのかもしれませんね。

最後まで読んでくださりありがとうございました。